2つの理由で悪化しやすい 「高齢者の低栄養」
同じ量を摂っても…

高齢になると若い時と同じ量のタンパク質を取っていても筋肉は減っていきます。その理由は、加齢によって筋肉合成率が低下するからです。空腹時にタンパク質を摂取した際の筋肉の合成率を、若年者と高齢者で比較した研究があります。

インスリンの働きが弱くなる

若年者は体重1kgあたり0.24g(体重60kgであれば14.4g)のタンパク質を摂取すれば筋肉の合成率が最大に、つまり、取り入れたタンパク質を体内でしっかり使える形に変化します。これに対して、高齢者が合成率を最大化するには0.4g(体重60kgであれば24g)の摂取が必要です。その原因は、高齢になるとインスリンが十分に働きにくくなるからです。摂取したアミノ酸は、インスリンの血管拡張機能によって筋肉内に運び込まれて、新しい筋肉が合成されます。つまり、インスリンの働きが弱まると、アミノ酸が筋肉に届きにくく、筋肉が合成されにくくなるのです。

より多く摂る必要があるのに

このように、年齢を重ねていくと筋肉を合成する力が弱くなるので、高齢者はより多くのタンパク質を摂る必要があります。しかし、30年前をピークとして、それから徐々に高齢者のタンパク質摂取量は減少傾向が続いています。人間の筋肉量は20~30代で最大量となりますが、それ以降は同じような生活をしていても筋肉量は減っていきます。筋肉を合成しにくくなる上に、摂るタンパク質の量が減ってしまえば、悪影響は大きくなります。

低栄養の悪循環

低栄養を放置すると筋肉量が減少し、疲れやすくなったり活動量が減ったりします。それにより、さらに食欲が低下し、ますます低栄養が進行します。こうした一連の身体機能が弱くなることをフレイルといい、この悪循環が進むと要介護リスクが上がります。栄養面が改善できれば要介護となるリスクを減らし、元の健康な状態に戻すことができます。

    

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