最新研究は神経系の役割について ―脳腸相関―
腸にもある脳のような役割

脳腸相関について最新の研究が進んでいるのが、腸の神経系的な役割です。腸は脳と同じような役割、つまり、入ってきた情報を処理して伝達するという役割をこなしています。その役割を担う神経細胞が腸には多くあり、その数は脳に次いで多いと言われ、種類もさまざまです。

腸にあるすごいネットワーク

以前は、脳が全身の機能を支配していて、脳で感じた不安を腸に伝えているという前提で研究が行われていました。ところが近年、腸には腸管神経系という独自の神経ネットワークが発達していて、感知したさまざまな情報を処理して脳へ伝達していることが分かってきました。つまり、脳と腸は情報を交換しあっているのです。それどころか、独自の神経ネットワークを使って、脳の指令が無くても腸自身で腸の活動を調整できるのです。

腸内細菌の大きな役割

さらに最新の研究において、腸から脳に送られる情報には、腸にすみつく微生物の存在が大きく影響していることも明らかになりつつあります。「脳腸相関」は体内の機能としてかなり重要であり、そして、その脳腸相関を深く理解するためには、ストレスの感じ方や脳の神経系の発達や成長に関わる腸内細菌は無視できない存在なのです。

過敏性腸症候群(IBS)

例えば、過敏性腸症候群(IBS)というストレス関連疾患は、腸に異常がないにもかかわらず、腹痛や腹部の不快感が続き、便秘や下痢などの便通の異常を繰り返す疾患です。なぜストレスによってこの病気が悪化するのかについて、長い間原因が分かっていませんでした。しかし最近になって、IBS疾患になる人は、脳が不安やストレスを感じるとその信号が腸に伝わりやすく、しかも腸が過剰に反応し、痛みを敏感に感じ取りやすいこと、さらには、その刺激が脳に伝わって苦痛や不安感が増すこと、つまり、IBSは「脳腸相関の悪循環」が起きていることが分かってきました。

    

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