どのようなものに使われる? ーその具体例ー
抽象的では分かりにくい

「症候群」は、いくつかの症状が一連のものとして認められ、経過や予後などを含め病的に特徴的な状態があるものに対して、命名されることが多いです。しかし、抽象的な話では分かりにくいので、もう少し具体的に説明しましょう。

原因不明のもの

まずは、原因不明のものに使われます。例えば、ドライアイやドライマウスを引き起こす「シェーグレン症候群」は、最初に発表した医師の名前に症候群をつけて名づけられました。自己免疫に問題が起きることが原因と分かっていますが、それ以上のことは分かっていません。治療法も確立されておらず、症状に対応した対症療法が行われています。このように、原因や治療法が未確立の難病は“症候群”と名づけられるものが多く、じつに国の指定難病の約3分の1は“○○症候群”となっています。

原因が複数あるもの

複数の原因があるものにも使われます。例えば、「かぜ症候群」はさまざまな病原体(主に数種類のウイルス)が原因でおこる鼻水、咳、発熱などを主症状とする上気道炎ですが、急性の鼻炎、咽頭炎、扁桃炎など単一の病気のうち、いくつかが認められるときに総称名として使われます。同じような使われ方はシックハウス症候群にもみられます。室内の空気が汚染されることで引き起こされるさまざまな健康障害の総称として使われます。

当初の名前がそのまま使われるケースも

当初は原因不明なものが後に原因が特定されても、名称がそのままのものもあります。コロナウイルスに関するものがまさにそうで、重症の新型肺炎を発症するとして「重症急性呼吸器症候群」、略してSARSと名づけられました。後にコロナが原因と判明しましたが、「○○病」に変更されませんでした。すでに名称が普及していることが理由と思われます。AIDS(後天性免疫不全症候群)も同様で、原因はHIV(ヒト免疫不全ウイルス)であることが判明済みですが、AIDSのままになっています。

    

マガジン表紙へ