便を利用して、腸内環境が良くなる!?


便が役立つ

腸内環境の善し悪しを把握するためには、便の状態をよく見ることが大切です。便は生きた腸内細菌の集まりだからです。さらに最近では、便は腸内環境そのものを良くするために役立てることを研究されています。健康な人と腸や全身の病気のある人とでは、腸内細菌バランスや種類の多さなどに違いがあることが分かってきています。

細菌を移植!

この数年、健康な人の細菌を患者に移植して、腸炎を治そうという試みが注目されています。2013年にオランダの研究で、抗菌剤の長期使用で細菌バランスを崩してひどい下痢になる腸炎の患者に、健康な人の腸内細菌を注入する「腸内細菌移植療法」を実施したところ、9割以上の人が治ったという報告がなされました。現在では日本でも臨床試験が始まっていて、7割程度の患者に治療効果が確認され、トラブルや副作用は報告されていません。

移植療法

移植療法では、移植の前にまずは患者さんに3種類の抗菌剤を2週間飲んでもらって腸内を除菌し、腸内の悪い細菌環境をリセットします。抗菌剤で除菌をすると、腸内からは悪い菌も良い菌もほとんどいなくなります。それから、健康な人からとった腸内細菌を移植するのです。健康な人の膨大な数の腸内細菌が注入されると、腸内環境が大きく変わるのです。

細菌のもとは…便!

移植する細菌のもとは、患者の家族から提供される便を使います。もちろん検査を受けて、感染症や寄生虫の問題がないことを確かめてから使用されます。提供された便を生理食塩水で溶かして、フィルターで粗いカスを濾します。それから、腸内にとどまるよう、水溶性食物繊維でとろみをつけます。それを注射器に入れ、大腸内視鏡を使って患者の大腸(盲腸周辺)に注入するのです。

    

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