「痴呆症」「脳トレ」から…すすむ「認知症」研究
|
約20年前に「痴呆症」と呼ばれていた名称が「認知症」と変わりました。痴呆という言葉に侮蔑感が伴うことで、早期発見や早期治療の妨げとなっていることも名称変更の一因でした。平均寿命が延びていく一方で、脳の機能が衰える高齢者が増えていたのです。
|
 |
|
認知症症状の高齢者が増えている時期に、「脳トレ」という言葉が流行しました。脳を鍛えないと将来不安という人が増えたのでしょう。しかし最近では、言語記憶や計算トレーニングのようなことを続けても、その能力だけは上がっても他の認知機能は上がらない、つまり、脳全体のトレーニングにならないことが確認されています。認知症はその原因物質やメカニズムが少しずつ判明し、脳のトレーニングは1つの事だけやれば良いわけではないことが常識になっています。
|
ちなみに、「認知症」は病気ではなく症状であり、脳疾患によって日常生活に支障をきたすほど認知機能が低下した状態を言います。そして、その原因となる脳疾患がいくつかあり、最も一般的なものがアルツハイマー病です。アルツハイマー病の原因は、脳内でアミロイドβと呼ばれるたんぱく質が蓄積し、神経細胞の死滅や脳の萎縮を引き起こすからです。最近はアミロイドβを除去できる薬も開発され、すでに実用化されています。
|
アミロイドβは神経細胞の保護など脳の正常機能を保つために生成されています。不要な量のアミロイドβは眠っている間に脳髄液によって洗い流されますが、睡眠が不足していると脳内に溜まり、代謝されずに残ったアミロイドβが悪玉となり神経細胞にダメージを与えます。つまり、認知症対策には、睡眠が欠かせないのです。そして、色々な調査や研究がすすみ、若々しい脳を保つためには、睡眠のみならず、運動や食事、さらにはストレスケアや社会的活動を行うことなど多岐にわたる生活習慣が影響することが分かってきています。
|

マガジン表紙へ
|