腎臓と寿命…その深ーい関係とは?

再生機能がない

肝臓や胃腸に比べて、腎臓はあまり気にかけられない地味な臓器ですが、その働きは全身に影響を与えています。しかも最近では、腎臓は寿命に大きく関わっているという説が有力になっているほどです。いったん機能が衰えても再生する肝臓のような臓器もありますが、腎臓に再生能力はありません。一度失った機能は簡単には取り戻せないので、大切にケアすべき臓器なのです。

カギは「リン」

腎臓が寿命と関連している点について、カギとなるのはミネラルの一種であるリンです。摂取されたリンは体内でリン酸カルシウムとなり、脂質と結びついて細胞膜を構成し、細胞の基本エネルギーを作ることにも関係しています。そのためリンは体に不可欠な要素ですが、過剰に摂ると体にとって毒となります。

過剰なリンが…

リン酸カルシウムとタンパク質が結合してできた物質は、血液に溶けて骨に運ばれますが、リンが過剰となった分は血管内でセメントのように固まりやすくなります。これによって動脈硬化が起きやすくなり、それが原因となり心臓病や脳卒中といった死を招く病気のリスクを高めます。実際に「いろいろな動物の寿命」と「血中のリン濃度」の関係を調べたところ、リン濃度が低いほど寿命が長いことが判明しました。人間は動物界では長命ですが、それは腎臓が余分なリンを排出してリンの害をできるだけ抑えているからと言えるのです。

心臓との関連

昔から腎臓が悪い人は心臓病を起こしやすく、逆に心臓が悪い人は腎機能が低下している人が多いことが知られていました。これは「心腎連関」と呼ばれ、それに関する研究もここのところ増えています。慢性腎臓病の状態が重症であるほど、心血管疾患の発症率とそれによる死亡率が高まることは分かっています。また、腎臓内でフィルターの役割を果たしている糸球体の血液ろ過能力が落ちている人は、心血管疾患のリスクが最大で3倍以上も上がると言われています。

   

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