　深い部分の痛みには「ハイドロリリース治療」

医療でも活用

肩周りなど皮膚に近い脂肪にファシアが存在する部位では、つまんでゆらゆらするセルフケアが可能ですが、それより深いところにあるファシアを和らげるのは難しいことです。しかし、最近では医療においてもファシアに関するハイドロリリースと呼ばれる治療を行なっています。

注射で生理食塩水を注入

ハイドロリリースとは、生理食塩水に麻酔薬を混ぜた薬液をファシアに注入する治療法で、主に整形外科で行なっています。固まっているスポンジに水を与えるイメージで、ファシアに水分が多くなると硬くなっていたファシアがゆるむのです。すると、周りの筋肉や神経などの癒着が剥がれ、ファシアの動きが悪くなった部位の痛みやしびれを軽減できるのです。

リハビリも大切

ただし一度緩んだからといって、それがずっと続くわけではありません。効果が続くのはとても短く、人によっては３０分もたつとまた硬くなります。ですから、生理食塩水を入れて１回で治療終了というわけではありません。定期的に生理食塩水を入れて柔らかくして、その間に動きを良くするためのリハビリを行ないます。生活習慣や身体の使い方が変わらなければ同じ痛みがまた出るのです。運動療法で筋肉をつけ、正しい姿勢を保持することで症状の再発を防ぐのです。

腰痛や手根管症候群で効果

例えば、腰痛は痛みのあるあたりの筋肉と筋肉の間にあるファシアに生理食塩水を注入すると、周りの筋肉がゆるんで痛みが軽減されます。また、手根管症候群などの神経のトラブルなどにも効果的です。手根管症候群は手首に通っている正中神経が何らかの理由で圧迫され、悪化すると手で何かをつかむことができなくなります。圧迫された正中神経の周りのファシアに生理食塩水を注入すると、平べったい正中神経が丸くなり、痛みを感じずに手を握れるようになります。ファシア利用の治療は始まったばかりです。これからさらに役立つ治療法が増えていくでしょう。

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