昔の人が長い時間歩けたのは、なぜ?

古武道に形がのこる「ナンバ歩き」

江戸時代の人はとにかく長い距離をよく歩きました。なかでも長い距離を歩いたり、走ったりするのが飛脚です。こうした江戸時代の人々の歩き方ではないかと言われているのが「ナンバ歩き」という歩き方です。全ての人がこの歩き方をしていたかは不明ですが、今でも能や古武道などにこの形が残されているのは確かです。

右足と右腰・右肩を同時にだす動作

少なくとも明治以降に取り入れられた西洋式の行進における歩き方とは対極にある手足の動かし方です。ただし、ナンバ歩きというと、右手と右足、左手と左足を同時に出すと思われているようですが、こうした意識で身体を動かすと非常に動かしにくくギクシャクした動きになります。そうではなくて、右足と右半身(つまり右腰と右肩)を同時に出す動作と考えると良いでしょう。

膝への負担が少ない

行進式の歩き方では膝が伸びてかかとから着地します。これだと着地の衝撃を膝で受けるので膝への負担になります。それに比べナンバ歩きだと、膝を少し曲げて足裏全体で着地しているので、膝への負担も大きく減り、全体で着地の衝撃を受けることができるので、長時間歩くことができるのです。それだけでなく、ナンバ歩きによって体幹をたくさん使うほど腰周りの筋肉が鍛えられるので、腰痛の予防にもなります。

体幹を動かす

通常の歩行ではつま先で地面を蹴るため、主にふくらはぎなどの小さな筋肉を使います。一方、ナンバ歩きはかかとを押し出して、肩関節と股関節が連動して動きます。大きな筋肉を動かす、つまり広い範囲の体幹を使いながら鍛えることができるのです。すると、体幹が強くなって効率よくパワーを使うことができて、疲れにくく長時間歩けるようになるのです。基礎代謝もアップするので、ダイエット効果も期待できます。

    

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