「ワクチン後進国」の象徴 ヒブワクチン
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日本のワクチン後進国の象徴のような存在がヒブ(Hib)ワクチンでした。1990年代から欧米ではヒブワクチンが導入され、2008年にはアジアやアフリカを含む110カ国以上で使用されています。しかし、日本で接種できるようになったのは、先進国に遅れること約20年、2007年のことでした。その時点において、東アジアで有料でも接種できないのは、日本と北朝鮮だけという状況でした。
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ヒブは「インフルエンザ菌b型」という細菌です。昔、冬に流行るインフルエンザの病原体と間違われ、こんな紛らわしい名前がついていますが、インフルエンザとは全くの別物です。ヒブによる重症の感染症には、髄膜炎、咽頭蓋炎、菌血症などがあります。
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ヒブワクチン導入前には、日本では毎年ほぼ600人の子供がヒブワクチンに感染し、20〜30人が死亡し、後遺症を残す子供が100人以上いました。そのほとんどが5歳未満で、半数が0歳から1歳です。3歳を過ぎるとヒブに対する抗体ができてくるので、保菌者は少なくなり、ヒブによる重症の感染症も減っていきます。ヒブは、ふだん小さい子供の鼻の奥に潜んでいて、健康な幼児でも5〜10%はヒブを保菌しています。
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小児科の医療サイドは、再三にわたってワクチン導入を国に求めてきました。しかし、厚生労働省はなかなか動きませんでした。ワクチン導入が進まない根本的な背景には、副反応に対して極めて慎重な国の姿勢があります。副反応による健康被害に対して、国民やマスコミの反響が極めて大きいこともあります。現在でも、ヒブは「任意接種」で、かなり高額の自己負担がかかります。できれば自治体が全額負担し、副反応に対して国の補助もある「定期接種」にして欲しいものです。
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