抗生物質が効かない乳幼児が増えている


乳幼児に「とびひ」が増えている

乳幼児の間で、薬の効きにくい「とびひ」(皮膚に水ぶくれができるなどしてかゆくなる病気)が増えています。この原因の一つとして考えられているのが、健康な乳幼児でメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)を持っている割合が高くなっていること。この球菌を保有していると、抗生物質が効かなくなってしまうのです。

なぜ抗生物質が効かないの?

抗生物質が効かなくなる大きな原因は、抗生物質の乱用です。確かに、抗生物質は菌をやっつけるのにとても有効ですから、細菌感染症の治療には不可欠のものです。ただし、細菌感染症の治療の原則は「その菌に有効な抗生物質を、適切な量で、適切な期間使用すること」です。これを守らず、有効でない抗生物質を使ったり、量が多かったり、投与期間が長すぎたりすると、抗生物質に対抗する菌が出来てしまうのです。

カゼの薬として乱用される抗生物質

カゼには抗生物質はほとんど効かないといって過言ではありません。カゼの原因の95%は「ウイルス」が原因で、たった5%が「菌」が原因といわれるもの。つまり、カゼの95%は抗生物質を飲んでも無駄なのです。にもかかわらず、日本外来小児科学会の調査では、「37.5℃以上の発熱があるカゼの患者さんには必ず抗生物質を出す」という医師が37%という結果が出ました。「カゼの5%にしか効かない抗生物質」をです。

医者も患者も「抗生物質」神話をやめよう

不要な抗生物質を使い続ける事によって、どんどん耐性菌は増えていってしまいます。高熱で細菌感染が疑われるのならまだしも、ただ咳だけとか、鼻水だけで抗生物質を飲むのは百害あって一利なしです。処方してしまう医師側も問題ですが、「カゼを病院で診てもらったら、抗生物質をもらわないと安心できない」という患者側にも問題ありでしょう。